おしらせ

活躍するPrivateEMT 連載第1回

特定非営利活動法人 ユニバーサル・レスキュー・ジャパン 理事 /
五十嵐 有さん

─── 第1回目の今回は、Priv.代表理事である福島圭介氏にナビゲーターを担当していただき、同理事である五十嵐有氏にお話をいただきます。 五十嵐氏が業務としている現場について、その特徴や魅力、問題点、今後の展開などをお聞きします。両Private EMTの2人に、対談形式でお話をいただきました。
福島
今回、『活躍するPrivateEMT』連載第1回のナビゲーターを務めます、Priv.代表理事の福島です、五十嵐さん宜しくお願いします。
五十嵐
宜しくお願します。
福島
はじめに私と五十嵐さんの関係性について、簡単に触れておく必要がありますね、 私と五十嵐さんはPriv.法人会員である株式会社ピースフルの代表と社員という関係でありまして、 同じくユニバーサル・レスキュー・ジャパンというNPO法人の理事として共に活動する仲間でもあります。 そういった関係もありますので、本音を聞き出すのが難しい部分もあるかと思いますが、 今回は日頃の関係を気にせず、ぜひ思いをそのままお聞かせいただけたらと思います。
五十嵐
極力、直球でお話できるようにします(笑)
福島
さて、早速ですが、まずは今ピースフルで行っている業務についてお聞きします。 ピースフルが行っている業務は、救急医療関係者でも未だ聞きなれない「プレアンビュランスケア(救急車到着前の救護活動)」という領域となりますが、 五十嵐さんは携わってどれぐらい経つのですか?
五十嵐
はい、私は救急救命士の民間養成校(湘央生命科学技術専門学校、神奈川県)時代からライフセービングクラブに所属し、 夏の監視活動を行っていました。経験と言えばそのころからということになりますのでもう6〜7年になりますね。ピースフルでの業務は4年が経過するところです。
福島
もうそんなに経つんですね、早いものです。坊主頭で学生していた時が懐かしい。
五十嵐
あっという間ですね、でも、とても充実した4年間だったと思っています。
福島
いいですね、自分で切り出してくれました。充実していた、具体的には、振り返ると何がどう充実していたのですか?
五十嵐
まずは、本当に多種多様な現場の救護業務に携われたことです。 この仕事は、現場の状況、与えられた人と物で最善の活動をしなければいけませんから、自分自身の中でも多くの引き出しが増えたと思います。 また、それぞれ現場でお仕事をさせていただいた他社のスタッフさん、クライアントさんなどと良い人間関係をつくってこれたことで、 自分自身の視野が広くなった気がします。
福島
なるほど、確かに現場によって業務内容が大きく異なることや、分野も多岐にわたることなど、大変ではありますがこの仕事の魅力の1つではありますよね。 では、その「多くの引き出し」とは、具体的には例えばどのようなものがありますか?
五十嵐
そうですね、ピースフルでは基本的に2名体制というのをどんな現場でもミニマムとして提案はさせていただいていますが、なかなかそうはいかない現場もあります。
私が担当する現場は、場合によっては1人で待機するようなことも多いのですが、そうなると有事の対応において、周りのイベントスタッフ、イベント関係者の協力が欠かせません。
しかし、イベント当日初めてお会いする方がほとんどである中で、その関係をつくるのは本当に難しい。 朝の挨拶、自己紹介、何気ない会話など、コミュニケーション力が大きく問われる部分ですよね。
また、もちろん救護対応自体についても、例えば外傷で頸椎損傷などを疑う場合に使用する、全脊柱固定器材であるバックボードというのを用意しています。
しかし、これは本来3人以上いないと使用できない。最低でも熟練者が2名いないと、症状を悪化させずに救急隊に引き継ぐという役割が果たせません。
ですから、1人救護にあたる場合には、そういった器材も安全に使えませんから、必要な処置もあえて「行わずに救急隊を待つ」という選択をすることもあります。
福島
そうですね、私も現場に出ていて、事故や急病の発生を想定し、有事でも重症度によってはこの器材は使わずにおこうとか、 逆にどうやれば使用できるのかと考えたり、発想力が必要とされることが多いですよね。
五十嵐
はい、この仕事の面白み、という部分であるとも思いますが。
福島
さて、少し視点を変えますが、プレアンビュランスケアの現場といっても、あまりイメージがわかない方も多いと思いますので、具体的にどのような現場があるのですか。
五十嵐
今、ピースフルで行っている業務の中心となっているのが、マラソンやサイクル関連のイベント救護業務です。 この業務は、救護スタッフ配置以外に、ボランティア救護スタッフの管理、 救護所の運営や他イベントスタッフとの調整などを含めたコーディネート業務という形で仕事を請けています。 他には、夏場の海水浴場・プールの監視業務、ライヴ会場や展示会等のマスギャザリングイベント(大規模集客イベント)、 オートバイ関連のイベントや危険の伴う撮影現場での救護待機、幼稚園児や小学生の修学旅行や林間学校などへの付添救護など、本当に多岐にわたりますね。
福島
本当ですね、ピースフルは設立から8年になりますが、本当に業務の幅が増えましたね。 では、五十嵐さん個人的には、どういった現場が最もやりがいを感じますか?ぜひ具体的にお聞かせください。
五十嵐
やはり業務頻度が多いのもありますが、マラソン・サイクル関連のイベントと、オートバイメーカーさん主催のイベントなども大変やりがいがあります。 これらは、正直傷病者の発生リスクが比較的高く、救護対応に遭遇する可能性が高いです。
本当は何事もないのがベストであり、これをやりがいとしてはいけないのですが、 救急救命士という資格者としてはやはり直接的に傷病者に対応することは、資格を活かせる瞬間でもありますから。
福島
なるほど、確かにそこは、私の立場だと大声では言えないところですが、少なからず一理ある部分ではありますね。 正直、業務の発注者さんからも、大きな事故や急病の対応をしたときに、最も感謝される。これは仕方のない事ですね、その時のために業務を依頼しているわけですから。
ただ、これは私の永遠のテーマでもありますが、スタッフが未然に事故を防ぐこと、何事もないことに最大の快感を心から得られるような、そういった会社にしたいと思っています。
五十嵐
そうですね、それが一番、確実にみんながハッピーなわけですからね。
福島
さて、ここまでPrivateEMTとして、五十嵐さんが携わる「プレアンビュランスケア」の現場についてのお話をお聞きしてましたが、 改めて、PrivateEMTとして4年間活動し今回Priv.設立に至り理事となられました。その意気込み、思いをお聞かせください。
五十嵐
私は、福島さんに比べ、より救急救命士民間養成校の学生たち、後輩たちと近い位置にいます。 私は、彼らが年々難しくなる就職について悩んでいる姿を目の当たりにしています。 消防職以外には選択肢がほとんどない状況、これは年々深刻さを増しています。 Priv.は、消防職以外にも救急救命士が活躍できる場を広げる突破口となって、 今後救急救命士を目指す学生たちの人生の選択肢を広げることに貢献できればと考えています。
福島
なるほど、直接的に必要性を日々感じていたということですね、確かに、もちろん私も同じ思いではありますが、 この1,2年は学校としても切実な悩みになっているようですからね。
五十嵐
はい、卒業し新卒で就職できないということが、どちらかというと当たり前のことのようになってきています。
福島
厳しい状況ですね。では、具体的にプレアンビュランスケアも含め、PrivateEMTの将来像と言いますか、 どう社会に貢献していくことが求められていくと思いますか?
五十嵐
将来像、難しいですね…。あまり広い視野で考えることは私にはできませんが、 私はやはりプレアンビュランスケアにおいてPrivateEMTが幅広く活躍することで、思いがけぬ急病や事故などで 不幸な思いをする人が少なくなればいいと単純に思います。
そういったニーズが確実にあります。 私たちと、救急隊と、医療機関がしっかり鎖でつながること、それにつきると私の立場では思いますね。 あとは、そのために絶対欠かせない、PrivateEMTの再教育。ここがPriv.の大きな役割になるのではないでしょうか。
福島
そうですね、どんな分野でPrivateEMTが活動していくにせよ、再教育は必須の課題ですね。 活動場所を広げる事と同時に、Priv.に課せられた使命、ですね。
五十嵐
昨年末、12月13日にPriv.発足パーティがありました。 救急救命士だけでなく、医師や看護師、学生、企業の方々、そして民間養成校からもご出席をいただきました。
石巻で共にこの1年間活動を共にした仲間も多く足を運んでくださり、たいへん盛り上がった会となりました。 ここで多くの励ましの言葉や期待のお言葉をいただき、多くの方に支えられ、そしてPriv.の未来に多くの期待が集まっている、ということを実感しました。
Priv.は始まったばかりですが、これから1人ずつ仲間を増やし、一歩ずつ前進していこうと、強く感じた1日でした。
─── 普段から共に仕事をする間柄でもあり、改めて対談する照れくささもありましたが、彼の秘めた思いをしっ かり感じることが出来た気がします。最後に彼が語った、Priv.役員としての決意。私は今回の対談を通じ Priv.が産声をあげた最大の意義をみたような気がします。
それは、彼をはじめ、PrivateEMTあるいは現 民間養成校の学生が、Priv.により自身の未来に明るい一筋の光を感じ、集まり、形にしていく力を集結さ せる場をつくれたことなのではないかと、現段階では、それが一番のPriv.設立の収穫なのではないかと、 そう感じた機会となりました。