おしらせ

活躍するPrivateEMT 連載第2回

株式会社 ふたばらいふ /
森 義信さん

福島
「活躍するPrivateEMT」連載第2回、今回もナビゲーターを担当させていただきます、Priv.代表理事の福島です、森さん宜しくお願いします。


宜しくお願します。

福島
まずはじめに、昨年12月に催されたPriv.設立パーティ、お疲れ様でした。素晴らしい冒頭のご挨拶でした。


ありがとうございます。とてもいい会だったと思います。 様々な方面からご来賓をお迎えできたこともよかったし、これからを担う学生が多く参加したことも意味がありましたね。 Priv.という団体が存在し、若き救命士の卵たちの受け皿になれる、これだけでも意義が大きいと感じます。

福島
さて、今回は森さんに、民間の救急搬送業務とは何か、徹底的にお話をお伺いしたいと思っていて、 私自身も勉強不足なところが多く、今日は楽しみにして参りました。


そうですね、実際の現場がどうなっているのか、知られているようでそうでもない、というのが現実ですね。

福島
まず早速ですが、民間救急搬送業務をご紹介いただけますか。


はい、まず最もメジャーな、一般的な業務としては、病院から病院への搬送を行うにあたり、 行政の救急車を使わずに有料で行我々民間の車両で搬送するというサービス。 様々なパターンがありますが、何らかの手術を受けるため大学病院などに入院していた患者さんが、 地元の医療機関に病院を移る場合などが代表的ですかね。

福島
救急車の適正利用、という言葉が最近言われていますが、その一役を担っているわけですよね。


そうですね、緊急性がなく、救急車での搬送が必要でない場合に、民間の救急搬送会社を利用してもらうわけです。

福島
はい、しかしふたばらいふさんの業務はそれにとどまらないとお聞きしました。


そうですね、最近多いのは、ご高齢の患者さんが、 入院先の病院から在宅医療サービスへの移行にあたり、病院からご自宅までの搬送を依頼される業務です。

福島
在宅医療という事は、訪問診療の必要な患者さんを搬送するわけですね、中にはもちろん寝たきりの方もいますよね?


もちろん、末期癌の方、脊椎症などで寝返りも自分ではうてない方など、様々です。 高齢化が進む中で、最期を自宅で迎えたいと希望される方や、病院の病床数の問題で退院せざるを得ない方など、事情も多様です。 しかし、搬送できる方法がなくて自宅に戻れないという方が増えているんです。

福島
民間救急搬送会社が不足している、ということですか?


いや、搬送会社はあるんです。しかし、呼吸器をつけていたり、体位を安定させて搬送しなければならなかったり、 搬送における危険度が高い場合に、搬送対応が出来ない会社が多いというのが実状です。

福島
救急救命士の同乗が可能な会社ばかりではないわけですね?


はい、まだまだ救急救命士が在籍している会社は少ないですし、 たとえ救急救命士がいても経験値の少ないスタッフの場合が多く、依頼する病院側が不安で依頼できない、という場合もあるようです。 在宅医療に移行する患者さんは、基本的には医療介入の必要な方ですから、 搬送依頼をする病院側も信頼できる相手でなければ不安でご家族に紹介できないですよね。

福島
なるほど、そんな実状があったんですね。確かに森さんのように消防署で長く勤務され、 搬送業務のプロ中のプロが同乗してもらえるなら病院側も安心ですが、どちらかといえばふたばらいふさんの方が異例ですからね。 民間救急搬送業務の質の向上という課題があるわけですね。


大きな課題ですね。今、民間救急搬送業務を行うには3日間の講習を受けて認可を得ることが出来ます。 しかし、これではもちろん足りない。内容も正直、実務的ではないんです。 搬送に携わるスタッフは、行政の消防救急と同等かそれに近いレベルを求めなければ、 民間の救急搬送会社を活用して、救急車の適正利用に役立てるという目的を達成させるのも難しくなります。

福島
さて、他にはどのような業務があるのでしょうか。


この時期だと、梅や桜の花が見たいので外出させてほしい、という依頼があったりしますね、 そういった個人のお客さまからの依頼が最近増えていますね。 月1回の病院受診に行くのに、寝台車でないと行くのが難しい方とか、本当に多種多様ですよ。

福島
確かに、お体に不自由があったり、ご高齢でお一人暮らしの方だったりすれば、救急救命士が一緒に行動してくれるなら、 行楽などにも安心して出かけられますよね。そういったサービスはニーズがありそうですね、喜ばれるんじゃないですか?


はい、とても喜ばれます。正直、消防職員として働いていた時に比べても何十倍も御礼を言われる機会が増えましたし、 中には泣いて御礼を言ってくださる方もいます。もちろん、業務内容の違いがありますし、 消防署の業務とは比較しちゃいけませんが、大きなモチベーションにはなっています。 森さんがいてくれるから安心、そう言ってもらえるのは本当に嬉しいですね。

福島
私も含め、学生時代や現場に出る前の救急救命士にとっては、救急処置をいかに行うか、 それにより命を救うか、それがすべてだと思いがちです。 もちろん、それも大切で救急救命士の真骨頂とも言えますが、 もっと幅広く社会に役立てるという可能性が、民間に生きる救急救命士にはありますよね。 なんだかPriv.の存在意義を主張するかのようですが(笑)


はい、私も神奈川県にある湘央生命科学技術専門学校の救急救命学科にて授業をもたせていただいてますが、 その中で必ず学生には、救急処置だけがすべてではないと言い続けています。 傷病者への接し方、1人1人に真摯に対応していくことが重要です。

福島
消防職員として経験を積み、民間で活動されている森さんが仰ることには説得力がありますね。

福島
さて、それでは最後に、Priv.の副理事長という立場で、今後のPriv.に課せられた使命と言いますか、 目標のようなものは何かをお聞きしたいと思います。冒頭に仰っていましたが、Priv.が存在すること自体に大きな意義があると、なぜそう思われるのですか?


今、民間養成校を卒業する救命士の卵にとって、就職難は極めて深刻です。 以前であれば、学校も消防職員になるためにひたすら勉強させるしかなかった。 しかし、今はPriv.のような団体が存在し、相談できる窓口がある。これは大きな一歩だと思います。 私や福島さん、その他様々な分野で活躍されているPrivateEMTが、それぞれの分野で受入れる間口を広げていくことこそ、 地道に我々がしなければならないことだと思っています。

福島
そうですね、急務ですね。焦らず、されど留まらずで、一歩ずつ進めていきましょう。 しかし、先ほどのお話にもありましたが、PrivateEMTの活動の場が広がるには、合せて教育が必要ですね。 それも重要なPriv.に課せられた使命ですよね。 ちなみに、民間救急搬送業務に携わるために必要な教育とは、具体的にどのようなものとお考えですか?


先ほどからお話している通り、民間救急搬送業務の幅は多岐にわたります。 机上の知識よりも、実務を通した実地研修が必須です。最低でも入門レベルで3ヵ月、一人前になるには6ヵ月以上は研修を積む必要があると思います。 また、最も重要なのは接遇、コミュニケーションスキルです。 救急処置のスキルは、現場経験のない中ではありますが、救急救命士資格取得のために学校で充分に学んできている。 彼らに最も足りないのは、圧倒的に接遇の経験です。民間救急搬送業務はサービス業であり、1人1人のお客さまのニーズを汲み取り応えることが必要です。

福島
確かに、それは私が生業にしているプレアンビュランスケアでも同じことが言えますね。 救急処置ができるのはある意味あたり前、求められるのは傷病者、家族関係者、その現場に関わる他のスタッフに至るまで、 様々な人とのコミュニケーションです。それがあってはじめて、私たちに何が求められているのかもわかる。 そして現場活動もスムーズにいきますからね。ある意味、民間の救急救命士養成校では、学生の人間力を磨くということが求められると思います。


当面の私の目標は、自分の下で若い救急救命士を育て、全国の民間救急搬送会社で彼らが活躍し、 民間救急搬送業務の質が全国的に上がること、そこに少しでも力を注げればと思っています。 そもそも私は、消防署で勤務した経験から、救急車の適正利用のため尽くしたいというのが、この仕事を選んだ理由です。 まだまだ、これからが勝負ですよ。

─── 今回、民間救急搬送業務について、その実態、経験談を中心にお話を伺うことが出来ました。 長い時間をかけて1つずつ築いてきた信頼の上に、今のふたばらいふさんがあるのだと伝わってきました。 合わせて、民間救急搬送業務という分野に大きな可能性を感じることができました。 最後に目標を語る森さんの目は真剣で、強い輝きを放っており、思いの強さが伝わってきました。 改めて、森さんと力を合わせPriv.がPrivateEMTの未来に向け突破口を開かねばと、私自身も思いを新たにする機会となりました。