おしらせ

東日本大震災 災害支援について

一般社団法人救急救命士連携ネットワークPriv.は、2012年4月に設立し2年近くが経過した。東日本大震災での活動が発足への足掛かりになった経緯をふまえ、震災から間もなく3年がたとうとしている現状、代表の福島氏が東日本大震災を語った。
早いもので、という前置きが適しているかわからないのですが、震災から3年近くが経過しました。まだまだ原発の終息には時間がかかり、被災地では本当に一歩ずつ、復興に向けて進んでいる状況です。震災について語る、ということで場をいただきましたが、日本全国が震災を経て多くを学び、検証し進み始めている今、私がここで語るべきは、過去を振り返るのではなくPriv.としての今後の歩みについてではないかと思います。
Priv.は震災から1年が経過した2012年4月に発足しました。発足当初より約1年間、石巻市で活動を展開していた石巻医療圏健康・生活復興協議会さんの傘下で活動をさせていただきました。当時、津波が浸水しながらも在宅で暮らす被災者の方々には、なかなか支援の手が届かない。もちろん、家がなくなってしまった被災者は仮設住宅に住んだり移住するなど本当に大変なご苦労をされていたのですが、在宅の方々も日常生活が一変し、健康や医療のニーズも大いに高まっていました。
私たちPriv.の救命士は、他職種の方々と協働し、石巻市の在宅被災世帯約8,000世帯の聞き取り調査および専門職サポートを行いました。具体的には、1軒1軒を訪問し聞き取り調査をした結果から、私たち救命士が必要に応じ再訪問するなどして医療や介護の必要性を判断し、専門職につなぐ役割を担いました。
災害時の被災地では、超急性期の「命をどう救うか」、という段階から、1週間、2週間、1ヵ月と経過するにつれ被災者の方のニーズが日々変化します。私たちは被災者にとって本当に必要な支援を現地に届けなければなりません。ニーズと支援のマッチング、これが何よりも難しいと、私は発災直後からの活動で痛感しました。
それがゆえに、石巻での活動は、聞き取り調査の結果から、必要とされる専門職によるサポートや物資、情報の提供などに適切につながれ、モデルケースとも言える仕組みで活動が行われており、そこに関われたことは私たちにとっても大きな経験となりました。
さて、現在Priv.が災害支援という視点で注力しているのが、ロジスティクス(以下ロジ)教育をPrivateEMTの間に広めていくことです。災害医療におけるロジこそ、PrivateEMTが力を発揮できる場であると私は考えています。
災害医療におけるロジとは、医療以外の災害地における活動全般を言い、医療チームが適切な医療を提供するための様々な調整が主な役割です。もちろん、災害時以外の医療でも事務方は必要ですし、医療でなくてもすべての業務においてロジがなければ成り立たないことが多々あります。しかし、災害時はその地域全体の混乱状態、インフラ途絶、交通遮断、二次災害の危険など、そして合せて医療チームも慣れない土地勘のない場所での活動にもなり、ロジにかかる負担は想像以上のものであり、ロジの力量がその医療チームの鍵を握るといっても過言ではありません。
私は、昨年10月に開催された日本災害医療ロジスティクス研修に参加してきました。岩手医大内に新設された、災害時地域医療支援教育センターをメイン会場に3日間かけて開催されました。参加者のほとんどは全国各地のDMATチームのロジの方々で、プログラムのメインは災害拠点病院や花巻空港ほか、実際に東日本大震災の時に拠点となった場所での実地訓練でした。大変有意義な機会に参加できよい経験をさせていただきましたが、残念なことに救急救命士の参加はほとんどありませんでした。
救命士がロジを担当した場合のメリットは明確です。救急医療に精通した者がロジを行うことで、医師・看護師の医療チームの意思を、言葉を交わさなくとも理解して調整を行える、いわゆる「ツー・カー」の感覚で物事を進められます。イレギュラー対応の多い災害医療において、その感覚はとても重要になってきます。
さて、改めてPrivateEMTのロジの可能性について触れさせていただきましたが、やはり東日本大震災での活動の経験から思うところが大きいです。私が活動した各地域、どこをとっても、そしてどの時期においても、振り返ればロジ的な役割が現地で欲されていたように思います。DMATのように、チームの中にもロジは必要ですが、様々な医療チーム間の調整、また医療以外の保健や介護、その他様々な支援団体との連絡・相談そして調整作業を行う役割が最も抜け落ちやすいのです。
しかしながら、救急救命士をロジとして教育していくことには大きな障壁があります。現状、消防に所属していない救命士の多くは、救命士として仕事に就くことができていません。自身の生活がままならない状況では、災害支援に備えて教育を受けるなど基本的には不可能です。彼らを日常で社会に活かすことができてはじめて、災害時の起用についてもシステム化できるのです。このままでは、彼らは力を発揮することなく、国の財産ともいうべき国家資格者が地に沈んでしまいます。
Priv.としては、まだまだ一歩ずつになりますが、PrivateEMTの雇用創出に注力し、1人でも多くのPrivateEMTが災害時に活動できる環境をつくっていきたいと考えています。今後、血気盛んな若手救命士が多く集い、共に歩んでくれることを願っています。また、様々な方面の皆様のご指導、ご助力あってこそ達成できる目標だと思いますので、ご賛同いただける方はぜひともお力添えの程、宜しくお願致します。